ノーベル経済学賞受賞者のアマルティア・センは、貧困を「潜在能力を実現する権利の剥奪」と定義しましたが、日本では貧困の定義が少し異なるようです。
潜在的な貧困とでもいうのでしょうか、毎日の暮らしに困る程度の貧困、
あえて言えば、一般的な日本人の生活レベルに達しない相対的な貧困が増えているようです。
日本では生活保護などの制度もあり、例え国民年金を払っていなかった国民でも最低レベルの生活は保障されているのです。
生活保護には様々な優遇措置が施されており、最低レベルの国民年金受給者からは逆差別ではないかという指摘もあるほどです。
さて、今日もHAFFPOSTから興味深い記事を転載させていただきます。
あなたもホームレスや売春婦に!?


■現代の貧困の原因
ピューリッツァー賞を受賞した元ニューヨーク・タイムズの記者、デイヴィッド・シプラーがアメリカの貧困層の実態を描いた『ワーキング・プア アメリカの下層社会』では、貧困状態に陥るきっかけについて、以下のような例が紹介されています。
・荒廃したアパートに住むことで子供の喘息が悪化
・救急車を呼び、支払えない医療費が発生
・カード破産を招き、自動車ローンの利息が上昇
・故障しやすい中古車を購入せざるをえなくなる
・母親の出勤に悪影響を及ぼし、遅刻や欠勤につながる
・母親の昇進と稼得能力を制約
・荒廃したアパートから引っ越すことができない
デイヴィッド・シプラーによると、1つ目のちょっとした不運が2つ目の不運を呼び、連鎖していくことで負のスパイラルに陥ってしまい、貧困から這い上がりにくくなる、というのが先進国の貧困の特徴です。
■何が「アンダーグラウンド化」のきっかけになるのか
日本において、貧困に陥るきっかけの代表例としては、以下のようなものがあります。
(1)離婚
現在の日本は、結婚したカップルの3組に1組は離婚しています。そして、冒頭で紹介した通り、一人親の世帯(主に母子家庭)の貧困率は54.6%と大変な高水準にあり、安易な結婚は貧困に陥る大きな原因の1つと言えます。
本来であれば、母子家庭になっても父親から養育費をもらえるはずですが、厚生労働省の調査結果によると、父親から養育費を受けているのは約20%と少ないのが現状です。父親の年収が高いほど養育費を払っている割合は高くなりますが、年収500万以上でも74%が養育費を支払っておらず、その理由は「新しい家族の生活が優先されるから」という分析があります。
(2)うつ病
当然ながら職がなければ収入は得られず、貯金が尽きれば貧困状態に陥ってしまいます。『日刊SPA!』が現在無職の35~49歳の独身男女200名に行ったアンケートでは、「無職になった理由」で最も多かったのは、うつ病など精神的な病気(約46%)でした。
ホームレスの支援団体であるNPO『てのはし』の精神科医、臨床心理士などの専門家チームが行った調査では、ホームレスの約60%はうつ病などの精神疾患を抱えている疑いのあるという報告もあり、うつ病などの精神疾患と貧困との強い関連性が示唆されています。
(3)低学歴・貧困の連鎖
学歴が全てではありませんが、統計的に学歴と年収の相関関係は明らかです。


ある政令都市の調査では、生活保護受給者の4割は親も生活保護を受けており、学歴は中学卒が58.2%、高校中退が14.4%と、高校中退以下となっていることが分かっています。つまり、貧困は子供の学力にも悪影響をおよぼし、次の世代へ貧困が連鎖しやすくなります。
■アンダーグラウンド化を防ぐ方法
自分はもちろんですが、次の世代へも影響を与える貧困から身を守るには、どうするべきなのでしょうか。もちろん、上述のような、貧困のきっかけとなりうるリスクを回避することが大変重要となります。
(1)結婚・出産・離婚は慎重に
司法統計『性別離婚申し立ての動機別割合の推移』によると、2013年に女性が離婚を申し立てたケースにおける離婚理由の1位は「性格の不一致」(44.4%)であるものの、「生活費を渡さない」(27.5%)、「暴力を振るう」(24.7%)、「精神的に虐待する」(24.9%)、「異性関係」(19.5%)も多くなっています。
生活費を渡さない、DVやモラルハラスメント、浮気をするなどといった男性では、結婚生活を継続することは困難でしょうし、離婚した後にきちんと養育費を支払う可能性は低いでしょう。「いつもダメ男にひっかかってしまう」というような人は、「子供ができたら彼が変わるだろう」などという期待で安易に結婚や出産をすると、自分にも子供にも大きなリスクとなることを肝に銘じましょう。
(2)処世術を磨く
株式会社ユーツープラスが2013年に行った『うつ病当事者への500人アンケート調査』では、うつ病になった原因として最も多いのは「仕事上の人間関係」(270人)、続いて「仕事の業務量が過大」(266人)、「仕事内容への不満」(145人)でした。このように、仕事をきっかけにうつ病になり、仕事を辞めざるをえない状況となると、一気に貧困に陥るリスクが高まります。
うつ病になりやすい性格として、生真面目、几帳面、仕事熱心、責任感が強い等があげられますが、既に「真面目に頑張りさえすればよい」という時代ではありません。「やっているようにみせて適度に息抜きをする」「周囲とうまくやる」など、世渡り上手になることは、貧困に陥らないために必要なスキルといえます。
(3)子供にはしっかり教育を
上述の通り、学歴と年収には大きな関連性があり、貧困は次の世代に連鎖するケースが多くなっています。その連鎖を断ち切るのに重要なのが教育です。
文部省の調査では、高校中退理由多いのが「学校生活・学業不適応」(39.3%)と「進路変更」(32.8%)などの生徒側からの中退で、「学業不振」(7.3%)、「問題行動等」(4.9%)など学校側からの中退は大幅に減少しています。学校生活になじめず不登校となり、高校を中退してニートとなって引きこもり状態となると働いて自立することは困難となりますので、子供に異変を感じたら、すぐに対処することが重要です。
冒頭で述べた通り、アンダーグラウンド化が進む日本では、6人に1人が貧困状態に陥っており、貧困状態となると負のスパイラルにはまってしまい、抜け出しにくくなります。上述のような点に注意し、貧困に陥るきっかけを作らないようにしましょう。